自然素材を使いましょう


○「和 紙」


 自然素材への関心によって、和紙を利用することが多くなってきました。今回はその和紙を取り上げてみたいと思います。和風住宅で紙と言われれば障子紙、襖紙だと思います。最近では、壁紙、照明器具、タペストリーなどのインテリアにも広く使われるようになりました。

 和紙は光りを透し「あかり」として私達の生活に溶け込んでいきます。その光景は、私達の古い故郷を思い浮かべるにふさわしい優しいあかりだと思います。満月の秋の夜にススキの穂が風でなびいいる様が障子に写し出され情景は日本人の誰もが思い浮かべる事ができるシーンだと思います。

 和紙は、中国の製紙法が朝鮮半島を経由して奈良時代に伝わり全国的に広がと言われている様です。最初は国を統一するのに必要な文書作成に使われ、徐々にその用途が広がって襖や障子紙として建築材料に使われるようになりました。和紙が書く用途以外にも使われることが多くなってきた理由として、和紙が強くて薄くて美しいと言う三要素を兼ね備えていたからだと言われます。

 和紙と言っても様々な用途に使われてその種類は無数にあります。これを区別する方法として原料、産地、用途などがあります。

 和紙の主原料によって楮紙(こうぞし)、雁皮紙(がんぴし)、三椏紙(みつまたがみ)、その他にも麻紙(まし)や竹紙(ちくし)などがあります。
 楮紙は強く、しなやかで、柔らかなので、揉んで耐えうる粘り強さを持つのが特徴で、障子紙、奉書紙、清帳紙、西の内紙の原料になります。 雁皮紙は、繊維が短く緻密なため、肌が滑らかで書き易く、耐久性にも優れ、襖紙や日本画用紙として使われています。また、色が鶏卵の殻に似ている所から「鳥の子」と言う可愛らしい名前で呼ばれています。
 三椏紙は、楮のなどに比べ強さに劣りますが、繊維が細く柔軟性に富み、雁皮紙の代用として開発されました。また、紙幣や証券用紙の原料として使われています。
 麻紙は、紙の原料としては最も古い歴史を持ちます。書の紙の原料として古くは使われていましたが、筆の流れがよくなく書きにくく、造る方も繊維が長く漉きにくく、時代と共に消えましたが、近年画紙用と復活して多くの日本画家に愛用されています。
 竹紙は、和紙の原料ではなく、中国から輸入された紙でした。現在では書画用の画仙紙に使われいます。

 和紙は、江戸時代には国を代表する産業の一つになってきました。各藩は地元の生産を保護してきたため多くの産地がありました。現在でも多くの場所で漉かれています。主な産地と特徴です。
 美濃紙(岐阜県)は、越前、土佐とともに現在の産地を代表する産地の一つです。高級障子紙「本美濃紙」のように楮紙を薄く漉く技術に優れて、品よい楮紙の生産地です。本美濃紙は国の無形重要文化財に指定されています。
石州紙(島根県)は、工程の主な部分はほとんど手作業で、きめ細かくて丈夫、品格があり 長期保存にも耐えられるのが特徴です。 障子紙、半紙などがつくられています。
 土佐紙(高知県)は、良質の原料の楮、三椏の栽培が盛んな貴重な産地の一つです。優れた用具、高度な技術により生まれる土佐和紙は、 種類の豊富さが特徴で時代に即した生産を行っています。 書画用紙、工芸用紙、障子紙などがつくられています。
越前紙(福井県)は、手すき和紙産地として全国有数の規模を誇り、ふすま紙、奉書(ほうしょ)紙、証券紙、画仙(がせん)紙などその種類が豊富なことでも知られています。
 吉野紙(奈良県)は、「吉野やわやわ」と呼ばれるほど薄手で引っ張り強く、ウルシこし紙に最適で、吉野山中からとれる白土を混ぜ合わせており、書道用としても貴重な生産地です。
昔ながらの原料を使うことはかなり難しくなっていますが、この他にも全国で和紙が漉かれています。

 建築の中の和紙の使われ方で代表は障子紙と襖紙ではないでしょうか。元々は障子は広い意味で使われており紙貼障子と襖障子とも呼ばれていたようです。

 障子はガラス窓ない時代の明かり取りの役目を果たしました。外部の自然光を内部に取り入れる時のフィルターとして機能し柔らかい光を創りだし、和風特有の室内空間の一部となっています。

 襖は、障子やその他の光源から光を受けて室内のインテリアになります。厳格な座敷の襖紙は純白の鳥の子を用いる事となっていますが、貼付け壁と襖を一体に綺麗な絵画描かれたり、数寄屋の建築では清楚な水墨画が描かれたりしています。

 その他に、壁紙、明かり欄間や腰貼りなどに使用され和風建築の造作には欠かす事のできない素材の一つです。近年は和紙の良さが見直されてビニールクロスの代りに壁紙への使用が増えてきています。これには、和紙の通気性や調湿性のほか、消臭作用、遮蔽効果などの多くの優れた性能があるからだと思います。

 和紙を壁や天井に貼る場合、下地が何であるかが重要になり使う糊が決まってきます。石こうボードなどの下地にはデンプン質のものを使い、ガラスや金属製の下地にはエチレン酢酸ビニール系のものを使用します。また、和紙貼りの場合は下地の平滑さが何より重要で、下地に少しでも不陸があると仕上げに影響してきますので注意が必要になります。

 インテリアで良く使われているのが、和紙を使った照明器具だと思います。光源から飛び出した光を包み込み優しい明かりに変えてくれる和紙は、部屋の雰囲気を和ませてくれます。昼間は外部の光が紙貼障子を透して、夜は照明器具の光が和紙を介して私達の脳に写しだされます。

 伝統的に使われて和紙ですが、新しい使い方と共に進化しています。昔ながらの良さに新しい防汚加工、防水加工やどうさ加工を施したり、大きな和紙にしわや空気を入れずに張り込む方法、収縮率の違う和紙とアクリルを一体化する方法、ガラス繊維の封入、セラミックコート加工、撥水加工などの技術開発がなされていますので、ますます用途広がっていくでしょう。

 和紙は、私達の一番身近な素材の一つで簡単に手に入り、扱い易い材料です。もっと色んな場所に、あなたのオリジナルでユニークな空間創りに利用したら如何でしょうか。

参考文献
建築知識 2001年6月号 (株)エクスナレッジ
淡交「別冊」和紙 平成6年8月発行 (株)淡交社
和室造作集成 片山三郎著 学芸出版社 昭和62年6月発行

○「タイル」

 前回は粘土瓦を取り上げました。瓦とタイルは材質は大体同じで使われる部位が異なるだけで、欧米ではタイルの中に屋根瓦(roof tile)を含め、タイルの一部として分類しているようです。歴史的みても、日本に伝わった時代も瓦と同じく、大陸より仏教と共に伝わりました。

 この時代は、もちろん「タイル」と言う名称ではなく、「磚」(セン)として伝えられました。「磚」とは中国で黒灰色・灰色に焼かれた煉瓦で、正方形た長方形など時代や地方によってバリエーションがあったようです。

 日本で「磚」は寺院などの敷き瓦、腰瓦、壁瓦、張付化粧煉瓦として飛鳥時代から使われてきました。大きな意味で捕らえると屋根瓦も「磚」ですので、日本のタイルの歴史は古いと考えられます。

 しかし、歴史の古い「磚」も屋根瓦としては発達していますが、欧米のように外壁や内壁の材料としてはあまり発展はなかったようです。これは、日本の建築構造が木造だったことと、室内では、履物を脱いで座式の生活が影響したのではないでしょうか。

 地震が多発する我が国では、重いタイルを壁材として使うには、不利になり木造に取り付ける工法にも問題がありました。また、インテリアとしては座式の材料としては、硬く冷たく不適切だったことが、発展しなかった理由に上げられると思います。

 日本でも、土蔵や民家の外壁に「なまこ壁」が使われていますが、これは火災などから物品の焼失を避けるために考えだされた非常にユニークな工法です。専ら、腰壁に用いられ漆喰壁と組み合わたり、全体を「なまこ壁」で建て防火に役立ていました。

 明治時代になると西洋館が建てられて、タイルの需要が増えてきました。床材、暖炉廻りの壁にもタイルが使われるようになってきました。大正初期に完成した東京駅や旧帝国ホテルに影響を受けて日本での本格的な外装タイル使用が本格的になりました。

 内装タイルもハイカラなイメージと衛生志向の後押しによって普及が始まり、浴室やトイレに取り入れられて生産量が増大していきました。温泉地の大浴場、飲食業の建物、デパート、映画館、地下鉄などタイルの持つ装飾性が大衆に受け入れられました。

 現在、タイルは建築材料で重要な一つで、コストも手頃で街の至る所で見る事ができます。工場生産がみ均一な品質のタイルが進む一方、タイルの持つ焼き物特有のむらや味わいが薄らいできているように思います。

タイルの焼成温度や性質によって大きく下記の4つに別けられます。

1)磁器質タイル・・・素地は透明で緻密で硬く、打てば金属性の清音を発します。焼成温度は2,500゜Cで殆ど吸水性ありません。

2)せっ器質タイル・・・素地は硬く、吸水性がなくあっても極少ない。焼成温度は2,500゜C前後です。

3)陶器質タイル・・・素地は多孔質で吸水性があり、叩いても清音を発しません。焼成温度は1,000゜C以上です。

4)土器質タイル・・・素地は有色で多孔質で吸水率が高い。焼成温度は800゜C前後。

タイルの用途上の種類としては、大きく分けて下記の4種類あります。

1)内装タイル・・・主として建物の内装に用いられるタイル。特に磁器質やせっ器質といったタイルは多くが水を嫌う水廻りに使われる。(磁器質、せっ器質、陶器質のタイルがあります)

2)外装タイル・・・主として建物の外装として用いられるタイル。磁器質やせっ器質は、耐久・耐熱・耐水・耐摩耗性に優れいる上、酸やアルカリと言った耐薬品性にも優れています。(磁器質、せっ器質タイルがあります)

3)床タイル・・・主として建物の床として用いられるタイル。外装タイルと同じ特徴をもちます。(磁器質、せっ器質タイルがあります)

4)モザイクタイル・・・内・外装の床や壁に用いられ、1枚の表面積が50cm2以下の小型のタイル(磁器質タイル)

 その他にもうわ薬の有無により施釉と無釉とに別けられます。上記区別と組み合わせ、デザイン性、用途、耐久性、加工性、メンテナンスの容易性などで使用タイルを決定していきます。

 現在では、タイルを使っていない建物を見つける事が難しいと思いますが、使用が容易になってきている反面、タイルのもつ本当のディテール美しさを引出した建物が少なくなりました。自然の粘土を原料ととした焼成品であるタイルを自然に建物に使っていきたいと考えています。

参考文献
ディテールがつくる風景  INAX出版 1997年
建築工事施工監理指針 平成5年版 (社)公共建築協会

○「粘土瓦」

 屋根材と言えば直ぐに浮かぶのは、瓦屋根だと思います。しかし、いまでは多くの材料が使われて瓦屋根の新築住宅が少なくなってきました。とくに、阪神淡路大震災以来軽い屋根材料が頻繁に使われるようになりました。

 住宅における屋根の役割は、寒暑・風雨・防火などの外部環境から、快適に生活するための環境を確保するが必要です。ですので、住宅を構成する部分でもっとも過酷な条件にさらされているのが屋根材です。これらの条件をクリアする屋根材料の一つが粘土瓦です。

 日本で始めて粘土瓦が使われたのは、飛鳥寺と言われています。その後、飛鳥・奈良時代は仏教興隆政策により寺院の建築が盛んとなり多くの瓦が使用されるようになりました。しかし、粘土瓦材は高価なため使われる建物はごく限られた寺社建築屋、城郭建築、諸大名の屋敷などに使われていました。

 粘土瓦が庶民住宅に使われだしたのは、8代将軍吉宗が瓦葺禁止令を廃止し、江戸市中に瓦を奨励するようになってからです。これの以前に、本瓦に比べて軽く、経済性、施工性の良い桟瓦が開発されて急速な普及になりました。

 桟瓦として全国的に本格的に普及するのは、明治時代に入ってからです。この頃になると瓦が機械化された工場で造られるようになり、新型の瓦も考案されるようになり全国的に使用できる環境が整いました。

 多種多様な日本の気候、世界有数の地震国の日本では、決して瓦葺き屋根には好条件とは言えませんが、日本各地に存在し、それぞれの地域に適した材質の選定、製造技術、施工方法が見られます。

 一口に瓦といっても種類は非常に多くあります。分類方法としても、型、形、大きさ、焼成方法、等級、生産地等の分類方法とあります。今回は自然素材である粘土瓦を中心に書きたいと思います。

 粘土瓦には、本瓦、桟瓦、S型瓦、平瓦、スパニッシュ瓦 フランス瓦などがあります。

○ 本瓦は、日本で最も古い瓦形式で平瓦と丸瓦を組み合わせて使用するもので、多くの寺社建築でみられ、重厚な雰囲気があります。

○ 桟瓦は、日本家屋で最も使用されている瓦で施工性、経済性が良く、地域の風土に適した納まりのがあります。

○ S型瓦は、スパニッシュ瓦を上下一体化したもので、山部分と下地に桟瓦よりも空気層が出来て断熱性が高い瓦です。

○ 平瓦は、水返しなどの細部に凹凸があっても基本的に平らな形状した瓦で和瓦、洋瓦のように使用範囲が限定されないので、どのような建物にも対応できる瓦です。

○ スパニッシュ瓦は、本瓦に似た上丸瓦と下丸瓦に形成された構造なり、重厚感あふれるイメージで葺きあがります。

○ フランス瓦は、長方形の板に凹をつけた三方向の水かえしがあるので、緩勾配の屋根にも使用でき耐風性も良い瓦です。

 また、粘土瓦は、燃焼方法により仕上がり雰囲気が大きく変わり意匠的には重要な分類方法となります。一般的には、いぶし瓦、釉薬瓦、塩焼瓦に分類されます。

○ いぶし瓦は、最終で燻化工程がなされ、瓦の表面に炭素を主成分とする炭素膜を形成させ密閉冷却して作ります。黒瓦、銀色瓦とも呼ばれて、良く焼成されたものは、独特のいぶし銀のつやが特徴ととなります。

○ 釉薬は、釉薬を塗って焼くために、釉薬によっていろいろな色の瓦が可能です。また、大量生産も可能で陶器質で凍害に強い性質を持っています。

○ 塩焼きは、無釉薬瓦の一つで赤瓦と呼ばれています。焼成の最終で食塩を用いて表面をガラス状に仕上げ、吸水性が低く凍害に強い製品です。

 瓦の生産は全国各地で行われていますが、とくに、良質の粘土が豊富で交通の便の良い生産地が発達してきました。特に、三州瓦、淡路瓦、石州瓦は、粘土瓦の3大産地と呼ばれて昔から生産が行われてきました。


○ 三州瓦は、愛知県の西三河地方で展開する全国最大の産地です。発祥は1700年頃が有力とされて、良質かつ豊富な粘土に恵まれ発達してきました。交通の立地条件が良く首都圏、中部圏、近畿圏のほか北海道、九州にも製品は送り出されています。三河地方の瓦は、焼成温度が高く優れた耐火性能を有し、凍害にも非常に強く人気のある理由にっています。

○ 淡路瓦の歴史は古く、約1300年前の飛鳥時代から作られているようです。交通の便と近畿圏と言う大きな市場に恵まれて発達してきました。淡路瓦の土は「なめ土」呼ばれ粘土瓦に適して粒子が細かく美しい仕上がりになります。三州瓦や石州瓦と比べて焼成温度が低く寒冷地は不向きかもしれませんが、いぶし銀の冴えは、他の産地の追従を許しません。

○石州瓦も歴史は古く昔は石見瓦と呼ばれて、淡路瓦と同じ飛鳥時代に端を発しているよです。石見地方には昔から良質の白陶土が産出され、雲州地方の来待石からとれる釉薬を使うことで、石州瓦独特の“赤瓦”(柿色)として注目を浴び、山陰はおろか北前船によって北陸から北海道にも運ばれていきました。高温焼成による耐候性、凍害無用の製品として発展してきました。

 上記は3大産地の特徴を書きましたが、全国各地で特色のある瓦が作られていますので、屋根材料の一つとして検討してみてください。ちなみに私の家も地元の淡路瓦を使った現代和風をイメージしてデザインいました。

 瓦は、屋根材料としてだけではなくエクステリア、インテリアでも良く使われるようになってきました。土から造られた自然素材の瓦が増える事のによって街並に風格をもたらしてくれるでしょう。

参考文献
建築技術 1993・5 No.515 (株)建築技術
ディテール 86号 (株)彰国社

○「木炭」


最近「炭」パワーが静かなブームを呼んでいます。石油製品の発達で燃料としての木炭は激減してきていますが、平成10年頃から農業用、畜産用、新規用途の開発が進み僅かではありますが生産量の増加がみられるようになってきました。今回は、この木炭を建築で有効に利用するための特性をまとめてみました。

私の父も農閑期の冬に炭焼きをしていました。私は小さい頃から手伝っていましたので大体の炭の焼き方は知っています。植林に先立ち雑木を伐採して、その生木を釜に詰めて乾燥させて炭化させて製品にして行く作業に携わっていました。

特に、製品にする段階で木炭を決まった長さにのこぎりで切る作業は、炭焼き釜で行っていましたので、鼻の穴に木炭の粉じんが入り込んで鼻は真っ黒なっていました。今から考えると労働安全に問題があるのでは思いますが、自然のものなので呼吸していたら肺の中を綺麗にしていたのかもしれないなと最近思います。現在は、都心の排ガスを吸い生活をしているので、こちらの方がもっと体に悪いのではないでしょうか。

田舎で焼いていた木炭は「黒炭」で比較的低温(800度以下)で焼いた炭なので、炭質は柔らので火が付け易い反面、火がついてから長持ちがしない点が特徴になります。非常に扱い易く、作り易く世界中で生産されている炭は殆どが「黒炭」になります。

それに対して「白炭」と呼ばれる炭があります。こちらは「備長炭」と聞くと良く知っていると思いますが炭の高級品として取り扱われています。こちらは、800度以上の高温で焼かれた炭で、炭質は非常に硬く、火を付けると高温で長持ちする火力が特徴になります。技術的に作るのが難しく、この技術は中国や朝鮮半島と日本の一部でしかみられない高度な技術のようです。

炭とはどんなものなのでしょうか。木材を酸素のないところや少ないところで過熱すると280℃前後で急激に分解が始まり、二酸化炭素、一酸化炭素、水素及び炭化水素類がガスとなって揮発し木材の重量が急に減少して炭化が進み、しだいに炭素分の比率が多くなります。温度が650~700℃になると、さらに炭の中の酸素や水素が減って、表面の性質が大きく変わってきます。

木材は炭化することによって、より多孔質になり、その表面積が飛躍的に大きくなります。つまり、仮道管及び細胞壁といった木材の基本骨格とも言える組織を残して炭化されるので、木材はカニカム構造を持った多孔質な材料になります。この孔は主に炭の吸着作用に関係があり、水中からの有機物の除去作用、床下の調湿材としての湿分の吸脱湿作用や農薬の悪臭の吸着作用、肥料の保持作用などがあり、私たちの生活に大いに役立っています。

伊勢神宮や薬師寺をはじめ、古いお寺や神社の床下には木炭が敷き詰めてあります。木炭の吸着作用や湿気吸収作用を利用して、湿気の多い日本の気候から建物を守ることに利用してきました。また、床下は白アリやカビ格好の住処になっていますが、木炭の除湿効果でこれらの白アリやカビが発生しにくくなります。

木炭を床下に敷く量としては、地域差による相対湿度の違いがあり必ずしも一定ではないですが、3.3平方メートル(一坪)あたり50~60kgも敷けば十分であるようです。床下に直接に散敷設する場合は、木炭の厚さ5~10cm程度です。また、商品化された「布袋状木炭マット」の場合、3.3平方メートル当たり45×45cmサイズであれば16袋程度、60×60cmサイズであれば12袋程度敷き込むことによって十分に効果が期待できようです。

多孔質の吸着作用を利用して、シックハウス症候群の手軽な解決方法でもあると考えられます。シックハウス症候群の原因物質としてはホルムアルデヒト、アセトアルデヒトやトリメチルアミン等があるが木炭によって吸着できます。既にシックハウスで生活しておられる方には、とりあえず簡単な方法として木炭を部屋に置いてみたらどうでしょうか。

白炭を枕に入れると快適に眠れるという商品あるようです。これは、木炭にマイナスイオンが発生する働きがあることを利用して爽やかな睡眠ができると言うことようです。また、木炭マットも発売されています。木炭枕と同じくマイナスイオン効果、臭いの吸着作用、冬には、木炭から出る遠赤外線のために全身がポカポカ暖められ、反対に蒸し暑い夏は湿気吸収作用によって寝汗を吸い取ってくれるために、四季を通じて気持ちよく寝られるようです。

木炭を焼きながらできる木酢液も注目を浴びている素材の一つです。木酢液には、染料や農業への利用が代表的ですが、木材の防腐剤や消臭剤としても使用できます。しかしながら、製品として販売するには木酢液を目的応じて改質や精製をしなければならないので建築への製品化を期待したいと思います。

最後になりますが、木炭は、30万年前から使われて人間には無くてはならない材料でした。この木炭という可能性のある伝統的素材、建築に関しては新しい材料だと思いますが、住宅造りに上手に取り入れて、快適な住宅を設計できたらと思っています。

参考文献
世界の炭やき・日本の炭やき  著者:杉浦銀治 発行所:牧野出版
炭のはなし  著者:立本英機 発行所:日刊工業新聞社

○しつくい壁


内壁の素材として予算的に許すのであれば日本の伝統的素材のしっくい壁をおすすめします。しっくい壁も自然素材ですのでシックハウス症候群を引き起こす室内の空気汚染の心配が不要です。また、多孔質材料であるしっくいは調湿機能があり梅雨時期には空気中の湿気を吸い込み、冬季は逆にしっくい内の湿気を外に放出します。デザイン的にも木材の風合いにとても良く、上品な仕上がりになります。

しっくい壁を造る時に一番重要なのは下地造りです。これも、できれば伝統的な竹小舞下地がよいのですが、時間と費用がかかります。しかし、地方によっては伝統的に竹小舞下地が使用されており職人さんや材料等も充実しており一般的に使われている所もあります。その他に内壁には石膏ラスボード下地が使われています。外壁の場合はラス下地を使う工法もあります。

今回は内壁に対して書きたいと思いますので、竹小舞下地と石膏ラスボード下地に付いて説明します。まず竹小舞下地は間渡し竹と小舞竹を現場で縄を用いてしかっかりからみ付けたものです。石膏ラスボードは、ボードの用紙の間に石膏をサンドイッチしたものに、はく離防止の穴をあけたものです。

竹小舞下地ができたら荒壁と裏返しを行います。下地の両面うち最初に塗った方を荒壁、その裏から塗るものを裏返しと呼んでいます。壁土は良土(荒木田土の類)を使用します。下塗り及び裏返し塗り壁には、わらずさを混入した練り置のものを用います。むら直しや中塗り用土壁土には、細かい目のふるいをを通過したものに、砂及びわらずさを適量に混入した練り置きのものを使用します。

石膏ボード下地場合はボード用せっこうプラスターを1度薄くこすり塗りしたのち、平坦に塗り付け水引き加減をみて、木こてを用いてむら直しします。しっくいを直接せっこうラスボードに塗って仕上げることはできないようです。しっくいはアルカリのpHが12ないしそれ以上を示します。そのアルカリ成分がせっこうボードの表面の紙を侵してはく離させる危険性あるようです。

しっくい用の下地ができあがると次は仕上げのしっくい塗です。しっくいは、消石灰にのりとすさをいれて作る日本の伝統的な塗壁仕上げ材です。現在しっくいを手にいれる方法として次の3つの方法があるようです。
1) 伝統的な工法により現場で練り上げる方法
2) 主に石灰メカーが調合したものを買い現場で水を使って練る方法
3) 工場において石灰と発酵させたすさを交ぜ練り合わせたものを現場に運んで使う方法。
現在は、1)の方法を使う事は特別な場合を除き行われることは少ない様です。それに代わり、既調合の袋詰めしっくい材料を水で練ったものが一般的になってきています。

一般的なしっくいの他に土佐しっくいの仕上げが最近脚光を浴びてきています。その他に、硅藻土仕上げやその他の伝統的土壁仕上げも大変魅力があります。皆さんも自然素材を使った家でくつろげる空間造りをしましょう。

参考文献
左官読本 建築知識編集部 2001年12月15日発行
木造住宅工事共通仕様書 住宅金融公庫監修 (財)住宅金融普及協会発行

○珪藻土

最近、「珪藻土」という言葉を良く耳にする様になりました。珪藻土とは、藻類(プランクトン)の死骸が、長年にわたり海底や湖底に堆積してできた粘土状の堆積岩です。古くから七輪・コンロ・耐火レンガの原料、ビールや日本酒醸造のろ過材、吸着・脱臭材などとして幅広く利用されてきた素材です。珪藻土は、北海道から九州まで日本各地に分布しています。中でも秋田、石川、島根、岡山、大分及び鹿児島では、良質の珪藻土が豊富に産出しているようです。世界的に見ても世界中に分布しており、アメリカ・ロシア・フランス・ルーマニアの生産が多く、全体の80%を占めるようです。このような自然素材を建築で使わない手はない左官業界では、いま珪藻土の開発や販売が活発に行われているのが現状だと思います。

これまでは、珪藻土は、焼いて固める方法しかなく、現場での利用はセメントと混合して、保湿材や耐火材の利用が多かったようです。しかし、特殊特殊固化材の開発で珪藻土、スサと水で練るだけで使えるようになりました。また、微細孔に自重の70パーセントの水を含むため乾燥硬化時の収縮が大きくひび割れ起こしやすい欠点がありました。そこで、炭素繊維という現在の材料と組み合わせることにより新しい仕上げが建築に加わりました。

また、珪藻土は、無数の孔があいて超多孔質の特性を持っています。しかも、0.1~0.2μの微細孔を有するこの土は、「呼吸性(調湿性)」と言うと最大の特性と共に、様々な複合効果を発揮します。主な特性として下記のようなものが挙げられます。
(1)防露・調湿機能:材料自体が呼吸して、吸湿・放湿をくり返しながら部屋の中の湿度調整を行います。
(2)防カビ・防虫機能:土の徴細孔が結露を防ぎこれに起因するカビやダニ発生を抑えます。
(3)断熱機能:熱伝導率0.1kcal/mh゜cと非常に高い断熱性で、外気に影響されにくい室内環境が得られます。
(4)吸収・吸煙機能:臭いや煙りを吸着するので脱臭や空気清浄の機能を持ちます。
(5)吸音・遮音機能:珪藻土の微細孔が音を吸収し防音効果があります。
(6)耐火機能:珪藻土の主成分SiO2は断熱効果・耐火性能に優れています。

珪藻土の仕上げの特徴としては、下記のようなものが挙げられます。
(1)外部の場合:保温・断熱・防露・遮音・凍結融解防止などの性能を高め、同時に豊かな表情を建物に与える化粧と保護を目的とした仕上げです。
(2)内部の場合:内装用は軽量骨材(パーライト)をあらかじめ混ぜてあり、専用の接着剤を水で薄めた液で練り合わせてこて塗りします。現代の土壁として、保温・断熱・防露・遮音・調湿・脱臭などの機能を生かしながら、しっくい調の仕上げ等、さまざまな表現が可能になります。
(3)土間の場合:叩き仕上げは伝統的な土間工法としてその風合いが好まれていますが、大変な作業であるため、今では、茶室や高級料亭などに使われているに過ぎません。珪藻土の床仕上げは、簡単に土間の風合いを再現できる工法です。

珪藻土の外部仕上げは、モルタル下地、コンクリート下地(直塗りは不可、下地処理が必要)、サンドモルタル下地、ALC下地(炭素繊維のネット工法)などに施工できます。施工前日にモルタル接着剤を塗布し接着増強及びシーラー処理します。珪藻土の下塗材を吹き付けその上で珪藻土の下塗材をこて塗りしていきます。追っかけて炭素繊維をふせ込み再び珪藻土(7~8mm)を十分に加圧して塗り込みこてで押さえます。その後仕上げの桐生砂を散布してこてで押さえます。しまり具合を見ながら、荒がき用のワイヤブラシでブラッシングし、追っかけて仕上げ用ブラシでパターンを刻みます。翌日以降に荒がき用ブラシで砂粒を払って完成です。

内部の仕上げ場合は、石膏プラスター下地、コンクリト下地の場合は外部と同じく直塗りは避けて、モルタル・しっくい・石膏プラスターなどで下塗りした上に施工します。ボード下地の場合は、ジョイント部・出隅・入隅部分は、寒冷紗等で補強し、ボード面は下地調整材などで全面しごき塗し下地の挙動・ひび割れを押さえた後、珪藻土仕上げ行います。下地処理を行ったあと珪藻土を2mm厚でこて塗して乾燥後(翌日以降)施工します。珪藻土を2mm厚さで塗り、追っかけて4mmの厚さで加圧塗り付けて平滑にこて押えして、仕上げに応じてパターン付けを行います。

土間叩き仕上げは、コンクリート下地或いは、モルタル下地(土・砂利の上の直塗は不可)が基本です。施工前日にモルタル接着剤を塗布し、接着増強・シーラー処理を施して置きます。床用珪藻土仕上げ材と叩き用山砂を練り合わせ、のろがけ面30~50mm厚で十分に加圧しながら塗り付けます。木ごてや木槌で叩きしめて表面にのろを上げ木ゴテで押さえ込みます。

以上簡単ですが珪藻土の説明です。まだまだ、発展途上の仕上げ材だと思いますが伝統的工法を組み合わせながら建築の材料ととして定着してきています。みなさんも自然素材の良さを試してみてください。

参考文献
左官読本 建築知識編集部 2001年12月15日発行

○自然塗料

私が住宅を設計する場合できるだけ無垢の木材を使用したいのですが、この時にどんな塗料が適当かいつも悩みます。できれば素木のままが良いとは思いますが住宅では現実的ではありません。今回は伝統的素材からは外れますが、自然塗料について書きたいと思います。

自然塗料と言えばドイツのオスモ、アウロとリボスが室内の塗装には良く使われています。基本的には自然の植物油を使った製品ですが、各製品とも基本的な考え方が若干違うように思われます。

まず「オスモ」については、ドイツのオスターマン&シャイベ社と言うドイツ最大の木製品メーカーで開発された商品で木を生かす自然塗料(木に深く浸透し、木目を生かし、木の呼吸を妨げるなく、発水性がある)だと思われます。3製品の中で一番歴史があります。

アウロは、自然環境に最も配慮された製品の一つだと思われます。3製品の中でも石油系溶剤、合成材料を一切使わず総て自然の材料を使用しています。また、原料の調達から生産、流通、廃棄のすべてで環境影響評価を採用しているようです。

これに対してリボスは、健康塗料と呼んだ方が良いかもしれません。自然材料がすべて人間良いとは限りません、自然溶剤も人間の健康に害を引き起こす可能性があります。そこで、リボスのコンセプトは「自然素材よりも健康を優先する」に至った様です。

どれも非常に大事なことだと思います。現在では3製品とも世界的に認められており、3社とも考え方に若干の差があると思いますが最終的に自然環境に優しい(人に優しい)をめざしているのではないでしょうか。

塗装方法ですが、私自身テーブルを2回程オスモで仕上げ見ました。オスモの場合は粘り気がありますので、薄くのばしながら塗ります。普通は刷毛で塗るのですが私の場合は雑巾で薄く延ばして塗りました。30分位おいて拭き取ります。オープンタイムは12時間ですが結局翌日に仕上げの塗装をおこないますので、3日程かかりました。

アウロとリボスは、まだ使ったことがないので詳しい事は分かりませんが塗装方法もオスモと変わらないと思います。大体使えるようになるまで3日程かかるみたいです。アウロは、フローリングのメンテように使っています。今度は、アウロとリボスを使ってみようと思います。

私はできるだけ、木の持ち味を生かしたい思いオスモを使いましたがその他の自然材料も塗装して見たいと思います。以上簡単ですが、自然塗料の案内です。実際に使用した場合はまた紹介したいと思います。

参考URL

日本オスモ(株) http://www.nihon-osmo.co.jp/
イヌイ(株)http://www.inuicorp.co.jp/Japanese/IR/index.htm
(株)イケダコーポlーション http://www.livos.co.jp/livos/livos.html

○「かき渋塗り」

日曜日、子供と一緒に家の木部の塗り替えをしました。塗る時は独特な臭い気になりますが、数日経つと薄茶色のしっとりした色合いになります。たまたま液体が手に付いたのでハンカチで拭いてしまいました。後日、洗濯をしたハンカチを見ると薄茶色に変色しているではないですか。数回洗濯してみても結果は同じでした。

「かき渋は何から作られるのだろうか。どんな物に使われどんな特性を持っているだろうか。 いつ頃から使われ出したのだろう。」と疑問が生じ始めました。

かき渋とは、渋柿の実を圧縮ろ過し、長い時間発酵させて抽出させた液体のことです。 日本の伝統的な天然の塗料、染料です。特に防虫、防腐、耐水性に優れており、建築や染色愛好者が使用している様です。また、薬用、酒造用に使われています。

かき渋の利用は、平安時代までさかのぼことができる様です。柿を一般農家が栽培して、村の中でも上層の農家がかき渋を搾だしていました。江戸時代には、名主や組頭が搾りの作業をしていました。戦前までよく使われていましたが、戦後は化学塗料に押されてほとんど使用されなくなってしまいました。昨今、各方面で天然素材が見直され、かき渋が新たに注目を浴びてきました。

安全性については、天然素材ですので子供と一緒に塗っても大丈夫です。しかし、塗る時に独特な匂いがするのですが、その匂いに子供が拒否反応を示さなければ一緒に塗れば楽しい作業になりますよ。

かき渋の塗か方法は、簡単です。
1.塗装面をきれいする。
2.サンドペパーをかける。
3.かき渋を塗ります(水で薄めた方が綺麗に仕上がります。
4.二~三日経ってから2回めを塗ります。(1回塗より濃くなります。)
5.1週間ぐらい経ちますと美しいかき渋塗のできあがりです。
以上簡単ですが塗方です。

あなたも、子供とかき渋塗に挑戦しませんか?

私の塗ったかき渋仕上げです。塗ったあとだいぶ時間が経ち下の方が色あせてきています。(だいぶ色むらがでています)

○べんがら塗り

私自信以前からベンガラ塗りには非常に興味を持っていたのですが、いまだに建築で使った事はありせん。以前滋賀県の沖島を訪れた時に殆どの家がべんがら破風の家でした。また、兵庫県加古川市で古い(築100年程度)お家の改修をしたのですが、その施主さんがべんがらに墨汁をいれて格子戸を塗られておられたのですが、建物に味わいを一層与えていました。

べんがらは日本でも縄文式時代の漆器に顔料として使われていました。また、古墳時代には“施朱の風習”という埋葬の儀礼が行われ、丹砂やべんがらが使われていました。赤い色は、呪術的神聖視され“魔よけ”、“死者の復活を願う”などの意味がこめられていたと言われていす。また、防腐的な効果を考えたとも言われているみたいです。

本格的に日本で生産が始まったのは、宝永4年(1707年)に岡山県川上郡成羽町の吹屋べんがらに始まるようです。そして明治、大正、昭和の初期と良質のべんがらを生産して約200年の間繁栄してきました。しかし、戦後になり原料の易い硫酸鉄ができてそれに加え燃料改革交通の不便等が原因で吹屋ベンガラの火が消えました。

べんがらは、酸化鉄は非常に安定しており錆び止め塗料としては、大変有効です。またその他、塗料して食紅、アスファルトののカラー舗装などにも使われているようです。そのほか、耐熱性に優れており陶器、漆器や染色の顔料としても広く使われている様です。

さて、私は建物に使いたいので、建築的内容に入りたいと思います。べんがらの色は、何色かと言うとべんがら色です。昔から日本の伝統色としてしたしまれてきた色です。抽象的には冴えた赤色ではなく落ち着いた赤でしっとりした色です。そのべんがらに削り炭、松煙や最近では墨汁を膠と混ぜ合わせ面格子や破風板の木部塗ります。

べんがら塗の方法の一例です。
1.べんがらに松煙を入れて混ぜ合わせます。
2.ニカワで溶いたべんがらを木部に塗ります。
3.べんがらをウエスで拭き取ります。(拭き取る作業が大変の様です。)

べんがら塗はなかなか大変な作業みたいですのでみなさんいろいろと高率の良い方法で作業しておられるみたいです。必要があれば下記のホームページ調べて下さい。私も、べんがら色を自分でしたいと思っています。べんがら塗を体験できたらホームページにUPしたいと思いますので、楽しみにしておいてください。

べんがら塗(試験的に塗った見本です)

写真(オカモトさん提供、オカモトさんの材料実験より)

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